「どのようすれば、うちの商品やサービスの素晴らしさが、届けたいお客様に伝わるのか?」…どの業種でも永遠のテーマ。
もちろん、お客様の心に響かせるためには、自社の商品やサービスが、お客様の期待を超える満足を提供する心豊かなものであることが大前提です。しかし…その次に、せっかく素晴らしい商品であれば、いつ、どのように、どこで、誰に対して訴えるのかはどの事業者でも常に頭を悩ませるところです。小学校の授業のように明確な「正解」があるわけではないからです。
では、結果として正解に近づくためには、どのようなアプローチで私達は考えているのでしょうか?
陥りがちな供給者論理
これについての具体的手法は、もちろん個別案件によってさまざまですが、ここではアプローチ方法の「概念」だけはお話ししましょう。
私達は、ご依頼いただく事業者のこれらのお悩みをヒアリングする際、必ず以下の2つのことを思慮深く考えます。
- 事業者の先におられるお客様の視点で判断する
- 事業者ご本人がなかなか気づきにくいキラリと光る事業資産・経営資源は何かを見出す
この2つの視点は、事業者ご本人ではなかなか気づかれていないことが多いものです。
まずは前者についてお話ししましょう。
本来、お客様目線に立った場合、いかに業界専門用語を避けて、ご利用されるお客様の生活シーンの中でどれだけ「親近感」が持てるものにできるかを大事にする必要があります。しかし、ほとんどの事業者さんは、ご自身が「当たり前」と思ってしまっている世界観だけで訴えておられることが多いようです。
つまり、商品やサービスの「供給者側」の常識は、時にご利用されるお客様側の「非常識」「未知の世界」になってしまうことが多く見受けられます。結局それでは、お客様にとって「自分には関係のない世界」「自分の世界観には縁遠い世界」という瞬時の判断力が働き、心が躍ることもなくなってしまいます。
もちろん、お客様が自分にとって有害と判断されるとクレームにつながることもありますが、そこまでなかなか発展することはありません。むしろ、クレームという形ですら反応を掴むことができないため、「静かなる離脱」が起きている可能性が高く、そのまま放置しておくと、残念ながら「相手にされない悪循環」となるようです。
それでは、そうした悪循環(スパイラル)に陥らないためには、どのような概念でアプローチすれば良いのでしょう?
ユーザー満足の本質
私達は、事業者さんからご相談を受けるとき、まずは扱っておられる商品やサービスの特性について、じっくりお聞きします。お聞きしながら、必ず「お客様が、その商品やサービスを利用した結果、どのような生活シーンで、どのような心の満足を得られるのか…その結果、どのような笑顔を見せることになるのか」を懸命にイメージします。
(そのイメージ手法、さまざまな方法がありますが、ココでは割愛します。)
実は、このイメージを描くことこそが、とても重要になります。
要は、その商品(サービス)を得たことにより到達する「その先の満足」の本質を探し当てることが重要になるのです。逆説的に言いますと、事業者が提供する商品(サービス)は、「生活シーンの中で得られる満足」に到達するための「ツール(道具・手段)」に過ぎないわけです。
それでは、具体例でお話ししましょう。
ホットケーキが食べたいのか?
私は個人的に幼少のころから、ホットケーキが大好きです。
神戸に、私にとっては最高のホットケーキを出してくれる喫茶店があり、大阪市内に住む私には決して利便性が良い場所ではないのですが、このお店を知ってからは毎月のように足を運んでいます。
なぜでしょう?…「好きなホットケーキが食べたいからでしょ?」とほとんどの方が指摘します。
実は違うんですね。
ここのホットケーキは、喫茶店ご主人の粉の素材、配分へのこだわり…そもそも「喫茶店とは」という世界観、そうしたことを熱く語って下さるお人柄…その全てが含まれています。
また、季節ごとにホットケーキもバリエーションも変えたりして、その素材選びのストーリーもお聞きしていて楽しい。そして、いつもながらの味の安定感や食感を堪能させて頂くと、いつも「河合さん、本当にホットケーキ食べなれてはるよね。」と褒められたり…。
なんだかんだ言いながら、いつも小一時間はその喫茶店で寛がせて頂きます。
その寛ぎは、私にとって心身ともにリフレッシュするには最高の時間です。
そうです。
私にとっては、「ホットケーキ」は「心身ともに最高の形でリフレッシュする」ための「ツール」の一つに過ぎないのです。「心身ともに最高の形でリフレッシュ」…これができるということは、決して大げさではなく「小さな幸せ」を得ています。
その「小さな幸せ」を得るための要素(ツール)は、ホットケーキだけではありません。
- 喫茶店のご主人との会話
- どれ一つ同じデザインがない店内のチェア達と落ち着いた照明によって醸し出されたカジュアルな空間
- チェーン店のcafeでは味わえないアットホームな雰囲気
これらのツールがバランスよく絡んだ結果の「小さな幸せ」なのです。したがって、おそらくどれだけ美味しいホットケーキであっても、私はテイクアウトはしません。この店内で、このご主人の前で会話しながら食べることに悦びを見出しているのです。
このように…
商品(サービス)の先にある「ユーザー満足の本質」は何か?
その満足を得られる生活シーンはどのような時なのか?
それをしっかりと供給者が理解した上で、自分の商品(サービス)を上手く組み込んでアピールする手法が大事になります。そうすると、そこには既に商品(サービス)の専門用語は必要ありません。「幸せ」を得るためのシーンを想い描いて、そのシーンの中に商品(サービス)が不可欠であるイメージを伝えれば良いのです。
もちろん、それを伝えるための手法として、どういう媒体やビジュアルを駆使して、どのように訴求を組み立てれば良いのかは、緻密な企画を練る必要がありますが、概念の本質としては、こうした流れを大事にすることが重要です。
ユーザー目線の生活シーンから浮き上がるもの
さて、こうした流れを汲んでいくと、先に書いた「事業者ご本人がなかなか気づきにくいキラリと光る事業資産・経営資源は何かを見出す」…ココにまでたどり着くことがあります。
「ユーザー満足の本質」から逆算して、自社の商品(サービス)がどのような役割を果たしているのか?
そして、それはなぜ自分のところから買っていただく必要を感じて頂けるのか?
さらに、これらをどんどん突き詰めていくと、意外な発見が出てきます。
- そもそもその商品(サービス)を提供するキッカケになったストーリー
- 過去の自社ならではの経験や知識
- スタッフの個人的なこだわりや想い
その他、以前からの取引先とのさまざまな取り組みの経験や、埋もれていた素材の「組み合わせ」により、さらに顧客満足の本質に届くモノが浮かんでくることもあります。
会計的概念から事業体の本質を見抜く癖
実は、私自身、リース会社や投資育成会社など財務諸表を読み取る金融の世界にいた経験から、常に事業者の「資産活性化」を描こうとする「クセ」があります。とは言いましても、実際に取引先企業の財務諸表を見せて頂くことをいきなりは求めません。
そういう財務分析の話ではなく、経営者やスタッフの方との面談を重ねると、その事業者の特性や強み…顧客に訴求すべきポイントを整理していると、頭の中に数字ではない資産が見えてくるクセがあります。それにより、事業分析が成されることがあります。
特に私が一番大事にしたいのは、「数字計上はされていないその事業者独特の無形固定資産」…つまり「見えない資産」の活性化です。この部分をこの場で深く解説するつもりはありません。ただし、簡単に言うとその事業者が形成してきた歴史や過去の資産から織りなす「企業文化」が、同業他社にはないとても魅力的なものであれば、その文化に共感されるエンドユーザーが商品(サービス)に触れた時にとても喜ぶ顔が自然と浮かんできます。
そして、経営者やスタッフの方々とご一緒させて頂いて「ユーザー満足の本質」と供給商品(サービス)の関係性について検証し、ユーザーが求めるさまざまな生活シーンについてブレインストーミングします。
不思議ですね…それを続けていると、どの事業者でも必ず良い方向の変化が生まれます。その顕著な変化とは、経営者と担当スタッフの顔がキラキラしてくるんですよ。そう…おそらく間違いなく「モチベーション」は上がってきます。モチベーションが上がってくると、私達も驚くほど能動的なアイディア出しや、改善への行動へ移っていきます。 特に私達が嬉しいのは、多くの「気づき」を見出される瞬間です。
もちろん、私達も一緒になってお仕事させて頂く時は、まずその事業者さんの事業姿勢が、お客様に心豊かさを提供されるものであることで、私達自身が共感させて頂けるものに限定しています。したがって、ミーティングはいつも、重苦しい雰囲気はどんどん解消され、笑顔で建設的なものになっていきます。
私も、そのミーティングでは、ファシリテーターの役割となるのですが、概念としては会計的要素を頭に浮かべたとしても、ほとんど会計用語は使いません。あくまでも「整理する手法」として、会計的概念を駆使しているだけです。
心豊かさを一緒に築く
なお、ここでの文中は、全て「私達」という言葉をずっと使いました。
「あれ?バックステージ社は、河合義徳一人の個人事業だから、私達ではなく私で良いのでは?」とお気づきの方もおられるでしょう。
しかし、弊社は案件内容によって、ビジネスパートナーとチームを組むことがあります。
もちろん、弊社単独でサポートさせていただくことも多いのですが、チームを編成する際は、その案件に適した私以上の専門能力を持つところと組みます。
つまり、私よりも優秀なスタッフを揃えて「成果」を出そうとします。
また、その「成果」とは、ご依頼いただく事業者の方々の「先におられるお客様の笑顔の数を今以上にもっと増やしたい」「心豊かな商品サービスであれば、それを必要とする方々の多くに届けたい」という部分を意味します。
したがって、編成されるチームスタッフ全員が、そのような弊社の業務遂行スタイルに共感してくれている方々で構成されます。
このような理由があり、この文中では、「私達」という言葉で表現させて頂きました。
私達がお金を頂いているのは、確かにご依頼を頂く各種事業者さんです。しかし、先に書きましたように、私達が共感させて頂く事業方針・商品(サービス)展開をされている事業者さんに限定しています。
結局私達は、常にそうしたご依頼頂く事業者さんの先におられるお客様に対し、事業者さんと共に「心豊かな生活シーン」をお届けしたいという想いが強いのです。